CPUクーラーって何だろう
パソコンの“頭脳”としてたくさんの処理を行っているCPU(プロセッサー)は、動作するとどんどん発熱し始め、負荷の大きい処理を行っている時には100度以上の高温になることもあります。
そんな高温の状態(オーバーヒート)が続くと、PCの動作が不安定になったり、最悪CPUが熱で膨張し故障してしまうのです。
CPUの故障を防ぎ、長く使用していくために存在するのが「CPUクーラー」です。
CPUクーラーはCPUを冷却する装置のことで、冷却方式の違いでいくつかの種類に分けられます。
空冷式 | 水冷式 | ガス冷式 | |
強制冷却 | 受動冷却 | ||
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ファンを回転させることで風を当て、CPUを冷却する方式。最もメジャー。 | CPUにヒートシンク(放熱板)を取り付けて冷却する方式。ファンレスとも。 | CPUに冷却水を循環させることで冷却する方式。パソコン上級者向け。 | 液体が気化する時の気化熱を利用して放熱する方式。要は冷蔵庫と同じ方式。 |
CPUの冷却方法は主にこの4つですが、「ガス冷式」は一般家庭ではまず使用されないものなので、今回は残りの3つについて詳しく解説していきます!
パソコンの用途がメールやインターネット、書類の作成など、一般的なものあれば、CPUクーラーについてあまり気にする必要はありませんが、搭載しているCPUの発熱量(TDP)が大きい場合や負荷の大きい処理を行う場合は、高性能なCPUクーラーを選択しないといけません。
ファン搭載 空冷式(強制冷却)のCPUクーラー
強制冷却と言われているこのCPUクーラーは、簡単に説明すると、ファンで風を当ててCPUを冷却する方式です。
俗に言う「CPUファン」というのは、コイツのことを指しているんです。
CPUクーラーは、冷却ファンを搭載しているこのタイプが最も一般的で、リテールクーラー(CPUを購入したときに付属するCPUクーラー)もこのタイプがほとんどです。
サイズが大きく、回転数が多いほど冷却性能も高くなりますが、回転数が多いとファンの回転音がうるさくなってしまいます。
「ファンの回転音が気になる!」という方は大型のCPUクーラーを選ぶと、ファンが大きい分風量が増えるので、回転数を少なく抑えることができますよ!
参考までに、強制冷却のCPUクーラーの各部位と冷却の仕組みを下記にまとめてみたので、気になる方はどうぞ!
コアプレート
CPUに密着することでCPUから発生した熱を吸い取る役割があります。(正確には、CPUとコアプレートの間にCPUグリスという熱の伝導を助ける潤滑剤が塗られています。)
ここには熱伝導率の高い銅が使われることが多く、この部分の加工が甘かったり傷があったりすると、熱伝導率が下がってCPUの冷却効率も下がってしまいます。
ヒートパイプ
CPUの熱をコアプレートからヒートシンクへ伝えるための銅製のパイプです。リテールクーラーや比較的安価なCPUクーラーにはヒートパイプがないことが多いです。
製品によっては、より熱伝導の効率を上げるために、直接CPUと接するように設計されているのものあります。
ヒートパイプの中には液体が少量入っていて、コアプレート付近で沸騰して気体になる→ヒートシンクの方へ登っていくと、冷やされて液体に戻る→またコアプレートの方へ液体として戻る、という流れで熱を伝導しています。
ヒートパイプ自体には放熱する性能はありませんが、熱が一箇所に溜まりやすいヒートシンクの全体にまんべんなく熱を伝えることができます。
ヒートシンク
コアプレート、またはヒートパイプから受け取った熱を放熱するための金属製の板のこと。
熱伝導率の高いアルミや銅が使われていて、プリーツ(ひだ)状にすることによって放熱性を高めています。
ファン
CPUを冷却するための要。送風機のようにファンで風を起こし、ヒートシンクに当てることで熱を冷まします。
CPUクーラーから「ファァァァ〜ン」という騒音が聞こえてくるのは、ココが原因です。
ファンのサイズは80mm、90mm、120mmの3つがあり、大きいファンの方が冷却性能も高く、回転数も少なくて済むので静音性も高くなります。
クリップ(プッシュピン)
CPUクーラーをマザーボードに取り付けるための四隅にあるクリップ(ピン)のことです。
マザーボードにある穴にこのクリップを押し込むと「カチッ」と音がするので、これでCPUクーラーの装着は完了です。
製品によっては、ネジで止めるタイプのものもあります。
電源コネクタ
ファンを回転させるための電源を供給するコネクタです。マザーボードに差し込みます。
昔は3ピンでしたが、現在はファンの回転数を制御できる4ピンが主流となっています
ちなみに、強制冷却のCPUクーラーの構造を簡単に図式化するとこんな感じ。
CPUから発生した熱はCPUグリスを介してコアプレートに移り、さらにヒートパイプがヒートシンクへと熱を伝導させ、そこにファンの風が当たることで冷却する仕組みになっています。
ファンレス 空冷式(受動冷却)のCPUクーラー
受動冷却(ファンレス)のCPUクーラーとは、冷却ファンが搭載されていないCPUクーラーのことです。
簡単に説明すると、強制冷却のCPUクーラーからファンだけ取り払ったような構造になっていて、ヒートシンクで外気に放熱させる仕組みになっています。
ファンがないため騒音が全くなく、音楽作成を行うクリエイターさんなど、静音性を追求したい方にはもってこいのクーラーです!
しかし、ファンで風を送ることができないぶん冷却性能が下がりますので、放熱の効率を上げるためにヒートシンクを巨大化させないといけません。そのため受動冷却のCPUクーラーは場所を大きく取ることになり、大きいPCケース(フルタワーやミドルタワー)じゃないと設置できなかったり、PCI Expressスロットに干渉してメモリが差し込めなくなったりする、というデメリットもあるのが難点です。
また、ヒートシンクの隙間に少しでもホコリが溜まってしまうと冷却性能が著しく落ちてしまうので、こまめにお掃除しなければいけません。
受動冷却のCPUクーラーはあくまで静音性を追求したい職人気質な方向け、というのが管理人の意見です。
一般的な用途(ネットサーフィンやメール、書類作成など)であれば、強制冷却のCPUクーラーの方をオススメします!
水冷式のCPUクーラー
水冷式CPUクーラーとは、文字通り水でCPUの熱を冷やす仕組みのクーラーのことです。
昔は設置や組み立てが難しく、冷却水の補充をしなければならないなど、定期的にメンテナンスを行わなければならないということもあって、「水冷式クーラー=PC上級者が使うもの」というイメージが強くありました。
しかし、最近は組み立て不要で簡単に設置でき、かつメンテナンスの要らない「簡易水冷式CPUクーラー」というものが登場し、初心者の方でも気軽に導入できるようになりました。
空冷式CPUクーラーは定期的に掃除しないとホコリが溜まって冷却性能が落ちてしまいますが、水冷クーラーは密閉されている構造なのでその心配はありません!
また、空冷のように大きなヒートシンクが要らないので、CPU付近のスペースに余裕ができるというのもメリットですね。
空冷式のCPUクーラーよりも高価でありますが、冷却性能が高いのでゲーマーの方が多く取り入れている印象を受けます。
水冷式CPUクーラーの各部位と冷却の仕組みもまとめてみたので、参考にどうぞ!
ヒートエクスチェンジャー
CPUに密着させて、熱を吸収する部分です。内部はヒートシンクのような構造をしていて、そこをを冷却水が通ることで熱を吸収します。このような構造をすることで水が触れる表面積が大きくなり、効率的に熱を伝えられます。
また、この部分には冷却水を循環させるためのポンプが内蔵されています。
組み立て式の水冷式クーラーの場合はポンプは独立していて、そこから冷却水が蒸発してしまうので定期的に補充しなければいけません。
チューブ
ヒートエクスチェンジャーとラジエーターを繋ぐ2本のチューブ。ヒートエクスチェンジャーで熱を受け取った冷却水をラジエーターまで運び、ラジエーターで冷やされた冷却水を再びヒートエクスチェンジャーまで運ぶための経路となっています。
ラジエーター
ヒートエクスチェンジャーで吸収した熱を放熱する役割があります。
チューブに放熱フィンが接着されていて、ここに冷却ファンの風を当てることで熱くなった冷却水を冷やします。この仕組みを「アクティブラジエーター」といいます。
ラジエーターは放熱の性能が高いので、空冷式のような強力なファンを必要としません。そのため水冷式は静音性が高いと言われています。
また、冷却ファンを搭載せず、ラジエーターだけで放熱する方法もあり、その方法を「パッシブラジエーター」と言います。
冷却ファン
ラジエーターにくっついている冷却ファンです。
ラジエーターの中を通る冷却水を冷やす役割と、PCケース内の熱気を外へ排出するための2役があります。
製品によってはファンはラジエーターの前に付いていたり、後ろに付いていたり、または両面に1つづつ付いていたりします。
クーラント
水に防腐剤や凍結防止剤を混ぜた冷却水のこと。ヒートエクスチェンジャーでCPUから熱を受取り、チューブを通ってラジエーターへ運ばれ、そこで冷却されます。
冷却されたクーラントは反対側のチューブを通って、再びヒートエクスチェンジャーへ流される、という循環を繰り返してCPUを冷却しています。
簡易水冷式のCPUクーラーは密閉された設計なのでクーラントの蒸発がとても少なく、補充が不要です。(というか、密閉されているので補充できません)
実際にPCに設置されている水冷式CPUクーラーです。
ヒートエクスチェンジャーがCPUを覆い隠すように密着し、ファンとラジエーターはケースの背面にある排気口に設置されています。
さて、一見価格以外は完璧に思える水冷式CPUクーラーですが、残念ながらデメリットもあるんです。
デメリット① 冷却性能は室温によって左右される
例えばパソコンを設置している部屋が暑かったりすると、冷却水が室温でぬるくなってしまうため、冷却性能が著しく低下してしまうのです。
なので、夏場などにエアコンを使わないようにしている方にはオススメできません。1年中室温を涼しく保てる環境でなければ、水冷はやめておいた方がいいでしょう。
デメリット②:3年ほどでチューブから水漏れする可能性がある
これはドスパラの店員さんも言ってたことなんですが、いくら簡易水冷がメンテナンス不要とは言っても、物には耐久年数というものがあります。使用状況にもよりますが、使用開始から3年ほど経過するとチューブが劣化して水が漏れてくる可能性があるのです。
万が一水漏れした場合、水冷CPUクーラーの下にあるグラフィックカードや電源などが水浸しになっておじゃんになってしまいます。
水冷CPUクーラーはこまめに状態を確認しなければならないので、ちょっと面倒なんです。
だから管理人はあくまで水冷は「PC上級者向け」ということで、初心者さんにはオススメできません…。
ドスパラで選択できるCPUクーラーの種類
BTOパソコンメーカーであるドスパラでは、PCを購入するときにCPUクーラーを変更することができます!
上はドスパラのCPUクーラーのカスタマイズ画面です。
PCに標準で搭載されている「ノーマルCPUファン」と、静音&冷却性能の高い「静音パックまんぞくコース」、さらに冷却性能が高くなった「静音パックまんぞくコース忍者」、そして水冷CPUクーラーの「水冷パック」の4つから選択できるようになっています。
これだけを見ても正直よくわからない(少なくとも管理人はわかりづらかった…)ので、それぞれのCPUクーラーの特徴を下記にまとめてみました!
ノーマルCPUファン
ドスパラでパソコンを購入する時、標準(無料)で付属する空冷式CPUクーラーです。
無料とは言っても、ドスパラではリテールクーラー(CPUに付属する安いクーラー)よりも冷却性能が優れているDEEPCOOL製のクーラーを採用しています!
他のBTOパソコンメーカーではリテールクーラーを搭載しているところがほとんどなので、ドスパラでパソコンを購入するとちょこっとお得感がありますよね。
ドスパラの標準クーラー | リテールクーラー |
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DEEPCOOL製のCPUファン。リテールクーラーよりも冷却性能が高い。 | CPU付属のリテールクーラー。ヒートシンクもファンもドスパラより小さい。 |
「ノーマルCPUファン」でも充分な冷却性能があるので、メールやインターネット、書類作成などの一般的な用途であれば、このCPUファンで充分です。
静音パックまんぞくコース
「ノーマルCPUファン」よりもワンランク上の空冷式CPUクーラーで、5,000円プラス(税別)することで選択することができます。
こちらもDEEPCOOL製で、ノーマルCPUファンと比べるとヒートシンクもファンもかなり大きくなっていて、冷却性能も格段アップしています。
ファンが大きくなった分1回転の風量が増えているので、あまり回転数を少なく抑えることができます。これによって、ノーマルCPUファンよりも静音性が高くなっているんです。
以前はトップフロー型のCPUファンが採用されていましたが、最近はサイドフロー型のCPUファンに変わりました。
現在 (サイドフロー型CPUクーラー) |
以前 (トップフロー型CPUクーラー) |
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ファンがマザーボードに対して垂直に取り付けられている。ヒートシンクを通過して温まった風を、ケース背面の排気ファンからすぐに排出することができるメリットが。 | ファンがマザーボードに対して並行に取り付けられている。CPUだけではなくマザーボードも冷却することができるが、ケース内のエアフローを邪魔してしまうデメリットも。 |
サイドフローのCPUファンなら効率良くパソコンの外にCPUの熱を排出できるので、いい改善だと思います!
オンラインゲームをプレイするゲーマーの方や、PCに負担のかかる処理をするクリエイターの方は、この「静音パックまんぞくコース」をオススメします!
静音パックまんぞくコース忍者
「静音パックまんぞくコース」よりもさらに上のランクの空冷式CPUクーラーで、写真を見てもらえればわかると思いますが、とてつもなく大きなヒートシンクを携えています。
ヒートシンクの幅は「静音パックまんぞくコース」のほぼ2倍で、ドスパラの空冷式のクーラーの中では圧倒的な冷却性能を誇ります。
しかし、あまりに大きすぎるがゆえにケース内でめちゃくちゃスペースを取ります。
CPUの右横にあるメモリスロットにまで干渉してしまっているので、メモリの増設や交換をしたい場合はこのCPUクーラーも外さないといけません。
オプション代も7,000円とやや高く、CPUの冷却性能にこだわりのあるPC上級者さん向けのクーラーです。
ちなみに、ヒートシンクの側面のデザインが手裏剣のように見えることから、『忍者』という名前がついたそうな。
水冷パック
ドスパラの「水冷パック」というのは、冷却液の補充などのメンテナンスが必要ない簡易水冷式のCPUクーラーのことです。
オプション代は9,500円と最も高いですが、やはり冷却性能と静音性はダントツ。
また、空冷のCPUクーラーよりもコンパクトなため、ケース内のスペースに余裕もできますし、エアフローの邪魔にもなりません。
経年劣化を気にしつつ、ときどき水漏れの危険がないかチェックできる方なら、こちらを選択するのもアリだと思います!
ここまで長々と解説してきましたが、ノーマルCPUクーラーでも充分な冷却性能があるので、「パソコンはメールとかネットサーフィンとか、年賀状作るだけかな?」とか「仕事で資料作成する」という方はあまり気にしなくてOKです!
逆にゲーマーの方やクリエイターの方は、「静音パックまんぞくコース」を選択することをオススメします!
以上、CPUファン(CPUクーラー)の解説でした!
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